米国市場進出

2026–2027年、日本企業の米国進出が加速|6社の動きから見える「現地実行力」の重要性

BEAMS、Onitsuka Tiger、UNIQLO、nana’s green tea、大阪王将、ASOBISYSTEMの動きから、店舗、ポップアップ、現地拠点、ブランド体験を通じて米国で存在感を築く日本企業の共通戦略を読み解きます。

Otto Lagarde(Ethos Edge Creative 創業者)2026年7月13日最終更新:2026年8月21日推定読了時間:約14分
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米国市場への進出を検討する日本企業・ブランドを象徴する、紅葉と鳥居越しの富士山

日本企業の米国進出は、単に日本から商品を輸出するだけではなく、現地法人、旗艦店、ポップアップ、イベント、店舗網、ブランド体験を通じて「米国で存在感をつくる」段階へと広がっています。

2026年から2027年にかけても、その動きは続いています。BEAMSはロサンゼルスでの常設店開設を進め、Onitsuka Tigerは2027年の米国市場再参入を計画。UNIQLOは北米で店舗網を拡大し、nana’s green teaと大阪王将はロサンゼルス地域に新たな旗艦拠点を設けました。さらにASOBISYSTEMは、北米事業を本格化するため米国拠点を設立しています。

業種も規模も異なる企業ですが、共通していることがあります。

それは、米国を単なる「輸出先」として見るのではなく、ブランドが現地で継続的に活動する市場として捉えていることです。

米国市場で長期的な成長を目指す日本企業にとって、商品そのものだけでなく、その商品やブランドを「どのように現地で見せ、体験してもらい、継続的に運営するか」が、ますます重要になっています。

2026–2027年、日本企業の米国進出で起きていること

BEAMS|ポップアップによる市場検証からロサンゼルス常設店へ

BEAMSは、米国市場への進出を段階的に進めてきた好例です。

同社は2024年に北米事業の基盤となる現地法人を設け、2025年には米国向けECサイトを立ち上げるとともに、ロサンゼルスで3回の期間限定出店を実施しました。そうした市場検証を経て、創業50周年を迎える2026年度中に、ロサンゼルスで約1,250平方メートルの大型常設店を開設する計画を発表しています。

注目すべき点は、オンライン販売からいきなり大規模店舗へ進んだのではないことです。

EC、ポップアップ、現地顧客の反応という段階を踏みながら市場を確認し、その先に恒久的なブランド拠点を置く。この流れは、米国進出を検討する日本ブランドにとって重要な示唆を含んでいます。

市場テストは「小さく見せる」必要はありません。期間限定であっても、ブランドの世界観を明確に伝えながら、将来の常設展開につながる形で設計することができます。

Onitsuka Tiger|2027年、ロサンゼルスを起点に米国市場へ再参入

Onitsuka Tigerも、米国市場を次の成長拠点として明確に位置付けています。

ASICSが2026年8月に公表した資料では、Onitsuka Tigerは2027年に米国市場へ再参入し、ロサンゼルスに店舗を開設する計画を示しています。同社はこの店舗を、ブランドの世界観を表現すると同時に、北米市場におけるオムニチャネルの拠点として位置付けています。

ここで重要なのは、「店舗」が単なる販売場所ではないことです。

ブランド体験、商品理解、デジタル販売、顧客との接点を結ぶ物理的なハブとして機能することが期待されています。

日本で築いたブランド価値を米国へ持ち込む際には、デザインをそのまま複製するだけでは不十分です。ブランドの意図を守りながら、米国の物件条件、材料、施工方法、規制、運営環境に合わせて現地で実行する力が必要になります。

UNIQLO|米国84店舗から、さらに広がる北米の店舗ネットワーク

UNIQLOは、日本ブランドが米国で継続的な物理的プレゼンスを構築している代表的な例です。

ファーストリテイリングによると、2026年6月30日時点でUNIQLOは米国に84店舗を展開しています。同社は北米で旗艦店戦略を進めるとともに、新しい都市への出店を拡大し、北米全体で年間約25店舗の出店を継続する方針を示しています。

2026年3月から5月の3か月間だけでも、北米で6店舗を開設し、その中にはシカゴの旗艦店やニューヨーク、ボストンの大型店舗が含まれています。

これは、米国進出が一度の「ローンチ」で完了するものではないことを示しています。

ブランドが成長すれば、店舗、サイン、什器、グラフィック、イベント、地域ごとのプロモーションなど、物理的なブランド接点を複数の都市で一貫して運営する必要が生まれます。

nana’s green tea|商品ではなく「日本茶のブランド体験」を北米へ

nana’s green teaは2026年5月、カリフォルニア州パサデナに北米初となる直営旗艦店をオープンしました。

同社は、この店舗を今後の北米展開を強化するための拠点として位置付けています。店舗では商品だけでなく、素材、内装、サービス、空間を通じて、日本茶文化とブランドの世界観を一貫した体験として伝えることを重視しています。

さらに同社は、2030年頃を目安に北米100店舗を目指す方針を示しています。

この事例が示しているのは、海外進出における「空間」の重要性です。

日本独自の商品や文化を米国へ届ける場合、商品の説明を英語に翻訳するだけではブランド体験は完成しません。素材、照明、什器、グラフィック、導線、接客環境まで含めて初めて、そのブランドらしさが現地の顧客に伝わります。

大阪王将|米国1号店を短期収益ではなく長期的なブランド展開の起点に

大阪王将は2026年5月8日、ロサンゼルスのソーテル地区に米国初となる旗艦店「OSAKA OHSHO GYOZA & TAPAS」をオープンしました。

同社は、この店舗を短期的な収益確保だけを目的とした出店ではなく、将来の多店舗展開と米国市場でのブランド浸透を見据えた中長期的なグローバル戦略の一部として位置付けています。

商品も、日本の店舗をそのまま再現するのではなく、ロサンゼルスの市場と顧客体験を意識した新しい形で提供されています。

海外進出において守るべきなのは、必ずしも日本国内の店舗をそのままコピーすることではありません。

守るべきなのはブランドの核です。

その核を維持しながら、現地の顧客、物件、施工、運営条件に合わせて最適な形へ落とし込むことが、海外でのブランド展開には求められます。

ASOBISYSTEM|米国に「現地で動ける組織」をつくる

店舗を持つことだけが米国進出ではありません。

ASOBISYSTEMは2026年7月、カリフォルニア州カルバーシティにASOBISYSTEM USAを設立しました。

新拠点は、事業開発、戦略的パートナーシップ、マーケティング、広報、アーティスト支援などを担い、日本発のアーティスト、クリエイター、エンターテインメント企業、IPが米国で活動するための現地基盤として位置付けられています。

この事例が示すのは、「現地に誰がいるか」の重要性です。

距離と時差を越えて日本本社だけですべてを管理するよりも、市場の中に判断し、調整し、動ける機能を持つことで、パートナーとの連携、イベント、マーケティング、現場対応のスピードは大きく変わります。

物理的なブランド展開でも同じです。

米国側に信頼できる制作・施工・物流のパートナーがいることは、日本企業が現地法人を持つ場合にも、まだ持たない場合にも、大きな意味を持ちます。

6社に共通するのは「米国で存在感をつくる」という考え方

これら6社は、ファッション、飲食、小売、エンターテインメントと業種も事業規模も異なります。

それでも、米国展開の方法にはいくつかの共通点があります。

  1. オンラインだけで完結しない
  2. ポップアップや限定展開を市場テストとして活用する
  3. 成長に合わせて常設拠点や現地組織へ移行する
  4. 商品だけでなくブランド体験を設計する
  5. 短期的な販売ではなく長期的な市場形成を考える

つまり、米国進出は「日本の商品をアメリカで売る」という一方向の活動から、米国市場の中にブランドの接点と運営基盤をつくる活動へ変わっていきます。

そこで必要になるのが現地実行力です。

日本企業が米国でブランドを展開する際に必要な「現地実行力」

日本本社がブランド戦略、クリエイティブ方針、商品、品質基準を管理することは重要です。

一方で、米国で実際にブランド空間をつくる段階では、現地でしか解決できない課題が数多くあります。

展示会場の規定、建物や施設の条件、電気、消防要件、材料調達、施工方法、労務条件、輸送距離、搬入時間、保管、修理、再利用。

日本では当たり前に使える材料や施工方法が、米国では最適とは限りません。

そこで必要なのは、日本のブランドを「アメリカ風」に作り変える会社ではありません。

日本側が意図したブランド体験を理解し、それを米国の条件の中で可能な限り忠実に、効率よく、継続的に実現できる現地パートナーです。

米国進出に向けた商談で名刺交換をする日本企業と米国側パートナーのイメージ
米国での確かな実行は、空間のつくり方だけでなく、ビジネスの進め方を理解することから始まります。画像はイメージです。

展示会、ポップアップ、店舗は別々の投資でなくてもいい

米国市場をテストする日本企業にとって、最初の接点が常設店舗とは限りません。

展示会ブース、業界イベント、製品発表、プレスイベント、体験型のポップアップやブランドイベント、ショールームなど、小さな接点から市場を確認する方法があります。

重要なのは、それぞれを完全に別のプロジェクトとして考えないことです。

展示会で使用した商品什器をポップアップや店舗空間へ転用する。LEDライトボックスやグラフィックシステムを次のイベントで再利用する。モジュール式のディスプレイを異なるブースサイズへ組み替える。

最初から再利用と再構成を前提に設計すれば、一度の投資から複数の市場テストを行うことができます。

円安は「入口」にはなっても、米国戦略そのものではない

為替が円安方向に動けば、日本から輸出する商品の価格競争力や、米ドル売上を円換算した際の価値が高まることがあります。

一方で、日本から資金を送って米国の店舗、展示会、施工、物流、賃料、保管などを支払う場合、そのコストは重くなります。

だからこそ、為替だけを理由に米国へ進出するべきではありません。

重要なのは、米国で需要をつくり、現地で売上を生み、その売上を次の店舗、展示会、イベント、物流、マーケティングへ再投資できる状態をつくることです。

為替は市場への入口を広げることはあっても、ブランドの成功を保証するものではありません。

最終的に差を生むのは、現地で何をつくり、どう運営し、どれだけ継続できるかです。

米国進出を「一度のプロジェクト」で終わらせない

BEAMSのポップアップから常設店への流れ、Onitsuka Tigerの米国再参入、UNIQLOの継続的な店舗拡大、nana’s green teaと大阪王将の旗艦店、ASOBISYSTEMの現地拠点。

方法は異なりますが、すべてに共通するのは、米国市場を短期的な販売機会だけで終わらせないという姿勢です。

日本企業が米国で長期的な存在感を築くためには、ブランド戦略と同じくらい、その戦略を現地で形にする仕組みが重要です。

店舗でも、展示会でも、ポップアップでも、ブランドイベントでも、最初のプロジェクトは次のプロジェクトにつながる資産として設計できます。

米国進出の成功は、最初にどれだけ大きく始めるかではありません。

市場から学びながら、ブランドの価値を守り、現地で動ける仕組みを少しずつ強くしていくことです。

米国での展示会・店舗・ブランド展開を計画していますか?

Ethos Edge Creativeは、日本企業の皆さまが米国で展開する展示会ブース、店舗・ブランド空間、ポップアップ、ブランドイベントを、現地制作、施工、グラフィック、物流、設営・撤去、保管まで一貫して支援します。

私たちの役割は、日本で築かれたブランドを作り変えることではありません。その意図と基準を尊重しながら、米国の条件の中で確実に形にすることです。

米国でのプロジェクトについて相談する

本記事で紹介する企業とEthos Edge Creativeとの提携・取引関係を示すものではありません。本記事は、各社が公表した情報およびその他の公開情報をもとに、2026–2027年の米国市場への進出動向を整理・分析したものです。

主な出典・参考資料